ジー・フール


見えた。
4機か。
倉田の戦闘機が右に上昇していく。
それを2機が追い掛けていく。
やがて雲と煙で見えなくなった。
僕の相手はせっかちのようだ。
左下を飛んでいる敵機がすぐに仕掛けてきた。

左に反転。
右で撃つ。
僕は加速して敵機を避け、右上を飛んでいたもう1機に2発。
煙と炎が風で揺らぐ。
僕はそれを確認すると、一気に下降した。
そのまま1発。
右翼に当たった。
僕は軽く舌打ちする。
敵機は右に傾き沈んでいく。
まだ死なせない。
僕はもう1発撃つ。
今度は完璧に捉えた。

僕は逃げていないかその周りを飛んで確認する。
敵機が完全に崩れたのを見てから、ゆっくり下降していった。

水が離れていく。
僕の近くだけ減っていく。
魚も鳥も騒ぎだす。
僕はこの時やっと実感するのである。
任務終了。
そのことを自然が教えてくれているように思える。
僕はエンジンを切って空を見上げた。
倉田も終わったようだ。
煙が舞っている。

1機こちらに下降してくる。
ゴーグルを取って、改めてゆっくり深呼吸した。