ジー・フール


ドアの前で軽く頭を下げ、部屋を出た。
ふ〜、と一息する。
倉田もまた一息ついた。
僕は食堂のある方へ歩きだす。
彼は後ろから僕の後を追う。
食堂は1階にあり、全ての部屋、オフィスは2階にある。
僕たち雇われ者の宿舎も同じ2階にあるが、棟が違う。
棟が違うと言ってもたいしたことはない。
ただ1階が駐車場となっているだけである。

ガラス格子のドアを開けて中に入る。
従業員が少ない為、食堂も大きくない。
6人掛けの白いテーブルが4卓あるだけ。
入ってすぐにL字型の厨房が見える。
僕は厨房に向かい、おばちゃんに注文した。

「でも、なんで俺らだけ呼び出したんだろうな」
親子丼を食べながら倉田が聞いてきた。

「今ここに残っていたのが僕たちしかいなかったんじゃないんですか?」
僕は真っ直ぐ前を向いたまま答える。

「なるほどね。他の奴らは任務中ってわけか」
倉田は微笑んだ。

僕は仲間の顔、名前さえ知らない。
知っているのは、前のパートナーの名前に倉田、そして司令官。
2年間ここで働いているが、知ろうともしなかった。