ジー・フール


普通なら自分の業績を他人に見せたいものなのに。
この部屋はそれを感じさせない。
淋しい場所である。
きっと僕たちを呼んだ人も淋しい人間だろう。

一度ノックがされた後、ドアが開けられた。

「失礼します」
女性が先に入り、僕たちに軽く頭を下げた。
メガネをかけて、スタイルもよく、黒い服で体が引き締まって見える。

次に入ってきた人に見覚えがあった。
昨日バーで会った無精髭の男だった。
男はまたあの不適な笑みを僕たちに向けた。

「待たせてしまってすまない」
男はそう言って僕の前を通り椅子に腰掛ける。

「本日こちらに配属になられた新堂司令官です」
女性が挑発した目で僕を見た。
僕たちは司令官の前に整列し敬礼をした。
ディスクに肘を置いて手を組んでいる。
そこから見える彼の目は僕らを睨み付けているように思えた。

「そう言うことだ。これからよろしく頼むよ」
司令官の声は昨日聞いた声よりも低く色気のある声だった。
しかし、無精髭はそのまま、髪も適当に後ろで束ねているだけで、ちゃんとしているのは服装だけであった。