中学には夏休みに出校日というめんどくさい日がある。

この日にある程度の宿題は出すのだが、終わっているわけがない。出校日は明日。今夜は徹夜か…

と、思っていたその頃、岩下からメールが届いた。

件名は「ちょっと相談」だった。

とりあえず受信ボックスを開いてメールを見た。そこには思わぬな内容が書いてあった。

「こんばんは☆ こんな時間やけどまだ起きてる? ちょっと相談乗ってくれへん?誰にも聞かれたくないことやねん。ちょっと長文になってしもたけんど許してや。あんな、俺気になるヤツおんねん。まだ名前は言えんけど、マチなら気付くやろ。俺、そいつに告白しよう思ってんねん。でも向こうの気持ちわからへんから、マチ間に挟んで話できへんかな。よろしく頼む 龍」

僕は衝撃的だったものの、大体の予想はついていた。あいつが、岩下が気になってる人、好きな人は…

海崎だ

僕は慌てて返信した。

「もしかしてイニシャルR.Kで、出席番号5番か?」

ここまでうって、僕の手は止まった。岩下の助けをすることは苦痛ではないはず。むしろ応援したいと思ってる。

なのに何故だ?何故

「もちろん応援するよ。間に入って手助けするよ」

という簡単な言葉を打つことができない?

結局僕は返信を打つことができなかった。

次の日、朝登校すると岩下が目で合図をしてきた。

僕はとりあえず岩下を人気(ひとけ)の少ない体育倉庫裏に連れて行った。

岩下は緊張したおもむきで僕に問うた。

「どう思う?」

僕はすぐに返事ができなかった。とっさに出た言葉は

好きにすれば

岩下は「なにムキになってんだよ」と怒り半分に言われた。

僕はなんとも言えなかった。

岩下は「言われなくても好きにする。首突っ込むんじゃねーぞ」と言い残し、走っていった。

どうしたんだ、僕… ものすごい脱力を感じた。

教室に行くと、真っ先に海崎の元へ向かった。

声をかけようとしたものの、なぜだろう。海崎がすごく遠いい存在に思えた。

僕は… 海崎が好きだ。

こんな感情になったのは初めてだった。

今まで海崎はただの「気楽に話せる女友達」としか考えてなかった。

なのに、今日は違った。

胸の奥の方からこみ上げる熱いねつ。これは嫉妬という奴なのか?

僕は岩下に嫉妬しているのか? そうなのか?

頭の中に好きという言葉がぐるぐる回った。

「マチ? どうかした? 具合でも悪い?」

海崎にかなしかけられた話しかけられた瞬間心臓が止まりそうになるくらいどきっとした。

僕はゆっくり後ろを振り向き

「どってことねーよ」

と、答えた。本当はめちゃくちゃどってことあるのに。