結局五分もしない間に僕は海崎の家の前に立っていた。

いくら母親同士が仲が良くても、ここは女子の家。

簡単に入れるところじゃない。インターホンの前でカチコチに固まる僕。

どうする?入る?帰る?

頭の中は妄想でパンクしそうだ。

すると「マチ⁈」と声がした。

顔を上げる僕。そこには窓から覗く海崎がいた。ばれてしまっては仕方がない。僕はインターホンを押した。

海崎のおばさんに招き入れられた僕は海崎の部屋まで案内された。

海崎の部屋は僕の部屋の1.5倍ほどの大きさで、ロフトが付いていた。

ロフトの上が彼女のベットルームらしい。海崎は毛布にくるまったままロフトの階段を降りてきた。

「無理すんな」僕は言った。海崎は大きめのクッションに座り、「大丈夫」とつぶやいた。

しばらくすると海崎のおばさんがお菓子を出してくれた。

「こんな時間だけど」と笑っていた。

そういえば、ただ海崎の顔を見たいだけのいっしんでここまで来てしまった。

「何の用?」と今聞かれたら、なんと答えればいいかわからない。

僕は俯いて黙っていた。

それからどれくらいの時間が流れたのか、覚えていない。

気づくと海崎が机の上で眠っていた。

僕は海崎に毛布をかけ直し、こっそりドアを開けた。

するとかすかに「ありがとう」と聞こえた。

振り返ると横になったままこっちを見ている海崎がいた。

「僕も明日行かないよ」僕の発言に海崎は驚いていた。

そしてもう一度目を閉じて「ありがとう」と言った。海崎の目から光るものが見えた。

家に帰っても母さんはまだ帰ってきていなかった。

みんなに「明日俺と海崎行けんくなった」とLINEをした。

みんなは当然のごとく驚いていた。

なんてったって誘った張本人が熱で休むんだもんな。

さらに僕も休むということについては「おめーら付き合ってるのかよ」というどう考えても的はずれな返信が来たが無視しよう。

次の日の午後、みんなからLINEで写真が送られてきた。「やっぱ行けばよかった」未練タラタラである。