今日は体育大会。文系の僕にはジゴクの1日だ。

僕の種目はハンドボール投げ。元野球部っていうのもあって抜擢されたけど、自己アピールした記憶はない。

誰だバラしたの。

いっそ仮病使って休もうかと思ったけど、前日の夜にみんなから「明日頑張ろうな」ってLINEきたし、行かないわけにはいかないのだ。

僕の出番は午前中だったので、午後はゆっくりできる。

それにしても暑い。なんだかめまいがする。意識が……

目を開けるとそこは救急テントの中だった。

隣には先生と海崎。そうか、僕は倒れたのか。

「ただの熱中症よ。お母さんに連絡しといたから」

保健の西田先生が言う。

「もう大丈夫?座席戻ろ」海崎が言う。

そこで初めて気づく。「海崎!なんでいるの⁉︎」

海崎は自称、華の文化委員。要するに放送委員だ。

保健委員は真島。僕は目をまるくした。すると、

「海崎さん、海崎さんがあなたを運んできてくれたのよ。自分の弁当箱の保冷剤まで使ってあなたを助けてくれたの。感謝しなさいよ」

と西田先生が教えてくれた。

「海崎お前…」僕のほおを何かがつたう。

「泣いてるの? ダサっ!男のくせに」海崎が言う。

「ありがとう…」多分いつかおかえしするぞ。

この恩、ぜったい。言いたかったけど言えなかった。

声がかすれて音にならない。僕はグシャグシャの顔を拭き、海崎と座席に戻った。

ちなみに男女混合リレーの結果、うちのクラスはトップ。1位を獲得し、総合結果は3位だった。