どれくらいそうしていただろうか、
彼の腕がゆっくりと解けていく。
「....ぐちゃぐちゃ」
彼は、そう言って私のマフラーを見る。
それから、細長い彼の指先が伸びてきて、慣れた手つきで私の首に巻いてあるマフラーを取ると、器用に巻き直してくれる。
そんな彼は真剣な顔をしていて、こんなことに真剣になっている彼がおもしろくて、そして愛しく思う。
「...冬美はマフラー巻くの下手だよなぁ」
彼は私のマフラーを巻きながら、そう言ってチラリと一瞬私の顔を覗きこんだ。
「...そんなことないもん」
私がそう拗ねたように言えば、クスクスと彼が笑う。
「私は冬が嫌いなの」
「冬美って名前なのに?」
「そんなの関係ないもん」
「........はい、できた」
そう言って彼は私のマフラーをポンッと触った。


