恋 文 日 和



しみじみと感傷に浸っていると

「あ、そうだ!」

突然立ち上がった玲が声を上げて話し出した。



「今日最終日だから、みんなで花火しよって!」

俊介が、と付け足した玲。


「花火?」

「うん!おばさんがくれたんだって。あたし花火なんて超久しぶり!」


はしゃぐ玲を横目に、あたしは

「そうなんだ…。」と、どこか気の抜けた返事を返す。



あの日。

キッチンで話したのが最後、忙しくて
神楽くんとはまともに話をしていなかった。


『おはよう。』

『お疲れ。』

その程度の会話だけで。


改めて顔を合わすとなると、少しだけ躊躇ってしまう。


何か、ちょっと憂鬱…。




「ま、とにかく夜ね!とりあえず仕事終わらせちゃおう!」

「あ、うん…。」

跳ねるように部屋を出た玲を追って
気落ちした気持ちを抱えたまま、あたしも最後の仕事に戻った。