水で泡を流し、食器を次々にトレイにいれてゆく。
玲がそれを拭き、棚へ並べる。
軽く10世帯分程ある洗い物も半分に差し掛かった時
玲が布巾を置いて言った。
「日和、ごめんトイレ行ってきていい?」
「うん、いいよ。」
手を止めずに答えたあたしに、玲が小さくごめん、と両手を合わせてキッチンを後にする。
そんな時だった。
泡立ちの悪いスポンジに、洗剤をつけ足すと
「手伝うよ。」
とふいに聞こえた優しい声。
「あっちは俊介がやってるから。」
振り返った先には、すでに布巾を手に食器を片す神楽くんがいて。
「…あ、ありがと、」
「おう。」
慌てて視線を水道に移すと、途端に高鳴り出す鼓動がやけに煩い。
一気に体中が緊張に包まれる。

