恋 文 日 和



3日目にもなると、
バイトの大体の流れを覚えて、初日程疲れる事はなくなった。

接客はまだ少し緊張してしまうけど、おばさんともすっかり打ち解けて楽しささえ感じ始めていたあたし。


だけど―――…



「菊井、これ運んで。」

「あ、うん、」

カウンターに置かれたチキンドリアを神楽くんから受け取ってそれを運ぶ。


夕食時のダイニングルームに、お客さんたちの笑い声が響いてる。

お客さんが泊まるそれぞれのペンションには
小さなダイニングキッチンが設置されているけれど、ほとんどのお客さんはこうしておばさんが作る夕食を食べに来ていて。


「うまそー!」

「お替りもありますからね。」

その人柄のよさもあるけれど、このペンションの売りである、おばさんの料理はどのお客さんにも大人気だった。



綺麗に平らげられた食器を洗い、テーブルを拭いてバイトの一日が終わる。


あたしと玲は食器洗い。
桜井くんと神楽くんはテーブル拭きと、広いダイニングルームに掃除機をかけて今日の仕事は終了だ。


カチャカチャとお皿がぶつかり合う音がキッチンに響く。



時間の流れを感じてる暇はないけど、この瞬間が一番好きかもしれない。
水の感触が、夏に焦がされた肌に心地いい。