夜更けの森に、フクロウの鳴き声が耳をかすめる。
あたしは着替えのパジャマをバッグから取り出し、答えた。
「…何がー?」
「何がって、日和、」
玲が言いたい事はわかっている。
あたしの様子がおかしい事、玲はいつだって察知してくれるから。
…だけど、今は話したくない。
話したら、それだけで涙が零れてしまいそうになる。
あの言葉を
受け止めなきゃいけなくなるから。
だから、まだ。
まだ、何も聞かないで。
「平気だよ、あたし。何か思ってたより大変ですごい疲れちゃった!」
「日和…、」
「あたし、先にお風呂行ってるね!」
言葉を繋ごうとする玲を通り過ぎて、急ぎ早に部屋を後にする。
「ちょ、日和ってば!」
閉じたドアに、玲の声が遮られた。

