容赦ない夏の太陽の日差しが、焦がすように空から降り注ぐ。

そのせいで、じんわりと滲む汗はいつまでたっても止まらなかった。


だけど、そんな夏の始まりを迎えた暑さは
バスが進む度、だいぶ落ち着いてきたように感じる。

窓の外、広がるのは
青々とした森林と、睡眠効果バツグンの涼しげな川のせせらぎ。




―――でも

視界に広がる景色、自然の音色さえあたしの心が揺られる事はなかった。





ただ
思い出すのは……

『バイト終わったら、会いに行くから。な?』


あの日の、神楽くんの笑顔で。



愛しさに溢れた彼の横顔は、聞かずとも全てを物語っていた。





あれは、確かに
そこに誰かを想う気持ちが存在してた。

ううん、きっと
相手も神楽くんを想っているはずで。




……わかってる。

あたしは、この恋を
想いを封じなきゃいけない事。





あたし、失恋したんだ。


『スキ』

その一言を、言えないまま。