急いで教室に戻ると、机の中にポツンと置かれていたあたしの携帯。
…よかったぁ。
ほっと胸を撫でおろして立ち上がる。
と、同時に教室の扉が開いて、あたしは咄嗟に携帯を後ろに隠した。
先生だと思い扉に視線を向けた先に、あたしの心臓がまた強く高鳴って。
「……菊井さん?どうしたの?」
夕焼けに染まるその茶色の髪が、初めて会ったあの日とリンクしてゆく。
「神楽くん……。」
ドキドキする胸が、彼の姿を滲ませた。
「何か忘れもん?」
「…あ、う、うん。け、携帯、机の中に置いたままで…。」
「あはは!それは大事だな。」
突然の出来事に、思うように頭が回転してくれない。
そんなあたしを気にする様子もなく、神楽くんは自分の机に向かって歩き出す。