「三上?あいつなら、さっき出ていったけど…。」
「あ、ありがとうございました!」
戸惑いながらも教えてくれた、名も知らない同級生に頭を下げる。
そして再び廊下を走り出したあたしは
真っ先に昇降口を目指した。
そう、伝えなきゃいけない人が
もう一人。
『好きだったんだ、入学式で見掛けた時からずっと…。』
『諦めるなんて、もう出来ないし。』
『決めるのは、菊井さんだよ。』
こんな優柔不断で、どうしようもないあたしを
“好き”だと伝えてくれた彼に
答えを、出さなきゃいけない。
階段を降りる度に、目頭が熱くなった。
でも、泣いたらダメだ。
優しさをくれた玲にも
勇気づけてくれた桜井くんにも
想いをぶつけてくれた三上くんにも
あたしは、もっと強くならなきゃ。
泣いたって、現実は変わらない。
だけど、未来は自分で変えられるはずだから。
この手で
あたしの言葉で、伝えたい。

