恋 文 日 和



「神楽の為に作ったチョコ、あたしが食べられる訳ないじゃんっ!!」

頬を押さえ、顔を上げたあたしに
荒い息を繰り返す玲は、続けて口を開いた。



「そうやって、明るいフリして笑って、あたしが気が付いてないとでも思ってたの!?」

玲の瞳が、大きく揺れる。


「あたしはあんたの何?友達?クラスメート?」


違うよね?と尋ねた玲が、あたしの肩を掴み

「親友でしょ!?だったら、辛いって、悲しいって言いなよ!!」

そう言って、涙を溢した。



シンと静まる廊下で

「言ってくれなきゃ…。日和の力に、なれないじゃん…。」

顔を下げた玲が、力なくうなだれる。


「玲……、」

ジン、と叩かれた頬が痛んで
その時初めて、自分が泣いてる事に気が付く。



「あたし、日和に幸せになって欲しいんだよ…。」

だけど、頬が痛くて泣いてるんじゃない。




玲の言葉が、涙が

「神楽と、幸せになって欲しい。」


一つ一つ
あたしの心に、突き刺さって。



「……っ、玲…っ!」

乾いたと思ってた涙は、玲の真っ直ぐな想いが届くのと同時に
あたしの頬を濡らした。