恋 文 日 和



そんな事を考えていると

「よっし、終わりっ!」

隣りで日誌を閉じた玲が立ち上がった。



「さっさと職員室行って帰ろ!」

「あ、うん、」

跳ねるように教室を出る玲を、慌てて追い掛ける。

肩に掛けたカバンからカサっと音が鳴って
それが何かわかっていたあたしの胸が、また一つ痛みを覚えた。




玲に追い付き、隣りに並ぶと外はちょうど夕暮れ時で。

歩幅を合わせて歩くあたしたちの影が
人のまばらな廊下に長く伸びている。



「ねぇ、日和。」

「ん?」

日誌を片手に、玲はあたしを見て言った。



「チョコ、マジで神楽に渡さないの?」

その視線に、消えそうな笑顔を必死に保つ。


「もう、玲ってば!その話は終わったでしょ?」

「でもさ、」

「いいの、いいの!玲が食べてくれたらあたしも嬉しいし!」


ぐっとカバンを持つに力を込めて、歩くスピードを上げた。



だけど、背中を追ってくるはずの足音が聞こえない。

あたしは立ち止まり、振り返った。




その瞬間、パン!っと乾いた音と共に
左頬に感じた鈍い痛み。


「……れ、い?」