神楽くんは
チャイムと同時に立ち上がり
『また明日。』
そう言って教室を出て行ってしまった。
桜井くんは
『俺、今年ダメだなー。』
なんてぼやいて
バイトだから、と下校するクラスメートの波に混じって教室を出ていって。
帰り際に桜井くんにキットカットをあげたら
『お返しはやっぱマシュマロ?』
そう言って、笑ってくれた。
だけど神楽くんには
キットカットすらあげられなかった。
明らかに義理チョコだとわかるキットカット。
義理だなんて、思われたくなくて。
教室の窓から見える神楽くんの背中を
その姿が見えなくなるまで、何も言えずに視線で追い掛けた。
あたしはいつになったら、この気持ちを彼に伝えられるんだろう。
今日という日を逃して、『好き』と言えないまま
また来年を待たなくちゃいけないのだろうか。
もう、溢れる想いは
止められないのに。
溢れすぎて
いつか窒息するんじゃないか、なんて
痛む胸に冗談を言ってみる。

