「日和。」
その呼び声に、飛んでいた意識が引き戻される。
「もうお昼だよ。」
顔を上げると、そこには当たり前のように玲が居て。
それだけで、どこか心が救われたような気がするのは
玲の声が、苦しくなるくらい
優しかったから。
差し伸べられた笑顔に促されるように、あたしは席を立つ。
前の席には
もう、神楽くんの姿はなかった。
「あ~、中華丼売り切れてるしっ!」
食堂に行くと、あたしと玲の大好物の中華丼は
すでに完売していて。
残されたメニューを見ながら
「てか、中華丼以外食べる気にならないよね!?」
いつもよりよく喋る玲が
文句を言いつつも、カレーの食券ボタンを押した。
「日和もカレーがいい?それとも、親子丼?あ、焼きそばあと一つだって!」
「…玲、」
「つーか、ロクなのないよねぇ、うちの食堂。ってこんな事言ったら怒られ、」
「玲。」
話を切るように玲を呼ぶと
「…あたし、大丈夫だから。」
そんなに気遣わなくていいよ?
そう言って、あたしは下手な笑顔を見せる。

