あはは!と甲高い玲の笑い声と
ハイテンションの彼女に肩を叩かれた神楽くんは
「いてて、別にそんなんじゃねーって。」
右肩を押さえながら
イスの背もたれに肘を乗せ、窓枠に背中を預けて言った。
甘い、甘い
今日だけの特別な雰囲気。
それは、教室中に溢れていて。
だけど彼の言葉は、その甘さとは引き換えに
苦味が含まれていた。
ほろ苦い、ビターな香り。
「美咲が、バレンタインに引っ越すって言ってたから。」
何となく覚えてただけ、と付け足す。
―――その瞬間、
玲と桜井くんの顔が引きつっていたのを
あたしは見逃さなかった。
と言うよりも、あたしも
二人と同じ顔をしていたと思う。
ううん、きっと
それ以上に酷い顔をしていたのだろう。
玲の視線が、痛い程に
あたしを見ているのが手に取るようにわかった。
無意識に
スカートを握り締めてる自分の指先が
情けない程に震えている。

