どうか、あたしにだけは
話を振らないで、と玲に懇願の眼差しを向けていると
「バレンタイン、だろ?」
スルリと滑るように今日のイベントを口にしたのは
意外にも、神楽くんだった。
あたしと他の二人も
みんなお揃いの顔をして神楽くんを見る。
「何?どうした?」
そんなあたしたちに、彼は不思議そうに首を傾げた。
「あ、いや、」
口ごもって桜井くんは言う。
多分、いや、きっと
あたしも玲も、桜井くんと同じ事を思っているに違いない。
この4人の中で
誰よりも、そういったイベント事に興味を示さなかった神楽くん。
実際に、浮かれていた男子たちの輪の中で
神楽くんはいつも漫画を読んでいたり、机に伏せて寝ていたり。
とにかく、神楽くんの口から
誰よりも早く
“バレンタイン”という単語が吐き出された事に
あたしたちは驚いていたのだ。
「お前、バレンタインとか…興味ないのかと思ってたから。」
なぁ、と桜井くんは玲に話を振る。
玲はそれに便乗するように
神楽くんの肩を叩いて言った。
「なーんだ!本当は神楽も今日楽しみだったんじゃなーいっ!」

