「……よし、」
真っ暗なリビングで、キッチンの灯りだけを頼りにせっせと手を動かした。
泡立て器を置いて、人指し指で味見をしてみる。
口いっぱいに広がったチョコレートの甘みが、あたしの舌を刺激して
「うん!おいしいっ!」
ニッと笑って自画自賛。
「って、もうこんな時間っ!!」
ふいに見上げた掛け時計に、驚いて声をあげる。
慌ててチョコレートを型に流し込むと
「日和ー?今何時だと思ってるのよ~。」
物音を聞いたお母さんが
パタパタとスリッパを鳴らし、パジャマ姿でリビングの扉から顔を覗かせた。
「ごめん~っ、あと少しだからっ!」
「ははーん。もしかしてそれ、明日のバレンタインのチョコレート?」
ちゃかすようにお母さんが言う。
「んもうっ!いいから!あっち行ってて!」
気恥しくてそう言ったあたしに
「はいはい。でも、お父さんにもあげないと拗ねるわよ?」
意地悪く笑ったお母さんは、捨て台詞を吐いてリビングをあとにした。
「…もう、」
火照った顔で、型に流したチョコを見つめる。
…お父さんにも
作ってあげようかな。
お母さんの言葉を思い出し、一回り小さい型を棚から取り出す。

