恋 文 日 和



そんな事を考えながら、鏡に背を向けると

「あ、あの……っ!」

どこかから聞こえたか細い声。



振り返った先に居たのは

「…美咲さん、」

細い肩を揺らして
走り寄って来る彼女で。



ここに来てしまった自分を後悔するはめになった。


「あの、翔くんと一緒、ですか?」

「……翔くん?」

…あ、

聞き返して、はっとする。



学校でも、あたしたちの間でも
神楽くんを下の名前で呼ぶ人はいないから

イマイチ、ピンと来なかった。



だけど
この子は―――…


「…神楽くんなら、今おみくじに並んでます。」

「そうですか、よかったぁ。」

はぁ、と笑顔を浮かべて言った彼女に
あたしの胸がまた一つ傷を増やした。



『翔くん』と呼べる程
近い場所に居る彼女を真っ直ぐに見られない。

チクチクと
痛みは塵のように徐々に増していく。



刺の如く、深く。


いつになったら
この刺は、抜けるんだろう。

そのうち
痛みで麻痺してしまいそうだ。




神楽くんを好き、だという気持ちさえも。