恋 文 日 和



神楽くんが今、どんな顔してるのか
怖くて視線を上げられない。


…あたしの事なんて
何とも思ってない、ってわかってる。

だけど、それを
まざまざと見てしまうのが怖いんだ。



「…じゃあ俺、行くね。」

「う、うん!」

当たり障りのない会話を交わして、無理に笑顔を貼り付け、三上くんに手を振った。


そして
人波に乗ったかのように見えた三上くんは、再び立ち止まって振り返る。



白い息が、三上くんの笑顔を霞ませて。


「来年も、宜しくね。」

吐き出された言葉と
同じように貼り付けられた笑顔。



「…うん、」

痛む胸に、そう答えるのが精一杯だった。



『来年も、宜しくね。』

言葉の意味や、理由が
あまりにも重たく感じて、溜め息の代わりに瞼を閉じる。



「……神楽くん。ごめんね、あたし…ちょっとお手洗い、行ってくる。」

「…わかった。気を付けてな。」


視線を逸らしたまま
列から抜け、逃げるように人混みに紛れた。