恋 文 日 和



ツンとした空気がより寒さを増して、長く連なった列が少しだけ動いた、その時だった。



「…菊井、さん?」

ふいに聞こえた、あたしを呼ぶ声。


その声がする方へ
あたしと神楽くんの視線が動いて。

流れるように進む人混みの中、逆らうように立ち止まり、こちらに視線を向けるその姿が
あたしの瞬きを止めた。





「…三上くん……。」

冷たく尖った風があたしの頬を撫でる。

その名前を口にして
ようやく三上くんがあたしを呼んだ張本人だったのだと理解した。


「…菊井さんも初詣に来たの?」

「あ、う、うん!…友達、と……。」

“友達”という響きがやけに不自然に口からこぼれ出る。



これじゃ、まるで
三上くんに言い訳してるみたい。

そんなんじゃないのに。



神楽くんは、友達なんかじゃない。

少なくともあたしの中で、神楽くんを友達という枠にはめるのは
間違っている。




でも…………。


「そっか、俺も地元の友達と来たんだ。」

「そ、そうなんだ…。」


この傷付いた視線を
あたしはすごく理解出来るから。

同じ立場に居るこの人を
傷付けたくない、そう思ってしまうの。