恋 文 日 和



そんな事を考えていると

「そう言えば、神楽は?一緒じゃないの?」

玲の問いに、ドキンと心臓が高鳴った。



「あぁ、さっき駅着いたって言ってたから、そろそろ来るんじゃねぇ?」

「ふーん。」

二人の会話がすり抜けていって。


両手で握り締めた紅茶に力が入る。


…どうしよう。
どんな顔して会えば……。


今更緊張し始める鼓動に、ぎゅっと瞼を閉じた時

「あ、来た来た!神楽、こっち!」

桜井くんが手を挙げて横に振った。



一気に加速する鼓動。



おずおずと視線を向けると
こちらに向かって小走りする神楽くんの姿。


必死に笑顔を作ろうと試みる。



「悪ぃ!電車混んでて…。」

「もー、凍え死ぬんですけど!…て、神楽…。その子、」


だけどそれは、一瞬にして
あたしから笑顔を奪っていった。


「…どうして、」

と呟いた言葉は、喧騒に消えてゆく。




「…こんばんわ…、」

大きな黒目が、戸惑いがちに揺れて。


瞳に映るその姿が、記憶を巻き戻していった。