「ほら、夏にみんなでバイトした時。好きな人がいる、って言ってたから。」
頭の中が、あの夏に巻き戻される。
ホタルに照らされた、神楽くんの笑顔。
繋がれた、おおきな手。
『好きな人、いる!』
揺るぎない、あたしの気持ち。
そして、それと同時にふいに思い出してしまった
あの名前。
『美咲……。』
ズキン、と心臓が鈍い音を立てる。
「…あー、そうだよね、そんな事言ってたよね、あたし…。」
あはは、と無理に笑顔を作り
そう答えてみた。
…あたしの、バカ。
何でこんな時に思い出しちゃうの?
今の今まで忘れてたのに。
思わず落としそうになった溜め息をすくい上げると
「菊井の好きな奴って……。」
と、伺うように神楽くんが切り出してくる。
「もしかして、三上?」
「えっ!?」

