次の日、桜井くんは10日ぶりに登校した。
それでも
すぐに男子たちと解け込んでしまうのは
桜井くんの持つ人柄の良さにあるんだと思う。
昨日の桜井くんは
まるで幻だったのかと思えてしまう程
彼は大口を開けて笑っていた。
久々に教室が活気ついたみたい。
「菊井、」
桜井くんに向けていた視線を横に移すと
「おはよ。」
カバンを肩に掛けて
ポケットに手を入れた神楽くんが、ちょうど教室に入ってきた。
「おはよう!」
「俊介、来たんだ。」
廊下に声が丸聞こえ、と神楽くんが苦笑する。
でも、どこか嬉しそう。
二人で笑う桜井くんを見ていると
「あとは、」
ふいに神楽くんが口を開いて。
「あとは、瀬宮だけだな。」
ポン、と叩かれた肩に
胸の奥で小さな、だけど鋭い痛みが走った。

