嘘だ、嘘だよ。
そんなの、信じない。
『夏休みに、玲を見かけたって奴が居て…。その時一緒に居たのが、』
そんなの聞いてないよ、玲。
『…数学の、松本だったらしい…。』
涙が、目の前全てを滲ませる。
それでも、あたしは走った。
玲と歩き慣れた、長い廊下。
雨は徐々に強さを増して
塞ぎたくなる程の、耳鳴りがする。
『だって、松本来月結婚するんだろ?何かの聞き間違いじゃねーの?』
『俺にもよくわかんねぇ…。ただ、玲が…、』
「菊井!」
背中に、神楽くんと桜井くんの声が聞こえて。
だけど、足は止まらなかった。
『神楽の事、本当に好きなんだね。』
玲、お願い。
何も気が付けなかったあたしを、どうか
どうか、許して。
「…っ、玲っ!!」

