その曖昧な笑顔に
拭い切れない違和感を感じた。


シトシトと降り止む事を知らない雨。

いつもは明るい玲だからこそ
この空模様も手伝って、余計に心配になる。



不安が大きくなる前に
聞かなきゃいけない、そんな気がして。


「…玲、本当何かあった…、」

「菊井!」

だけど、それは玲に届く寸前で途切れた。



あたしの声に被さって、バタンと勢いよく開けられた教室の扉。
そして、懐かしい呼びかけ。


「菊井、」

それがすぐ後ろまで近付いたのを感じ
思わず肩が跳ね上がった。



振り向かなくとも、わかる。

誰?なんて、聞くだけ愚問だ。



「ちょっといい?」

引き寄せられた腕が、痛いくらい。


神楽くんと視線を合わせられなくて、逃げるように玲を見ると

「行ってきなよ。」

玲の言葉と同時に、あたしの腕を引いた彼が廊下に向かって歩き出した。