バイト先の裏口から外へと出る。
正面から出ると、神楽くんに見つかってしまいそうだから。
後ろ髪を引かれるような思いと
どこか安心したような気持ちが、同時に襲いかかってくる。
矛盾した心に
これでよかったんだ、と何度も言い聞かせた。
このままあたしが居たら
神楽くんまでクビになってしまう。
そんな事にならない為にも、あたしがここを辞める事は
きっと、無駄にはならないはず。
もうすぐ、夏休みだって終わる。
そうしたら、また
毎日学校で会えるんだ。
「…大丈夫、」
まるで口癖のようにそう唱えて
一歩ずつ、バイト先から離れてゆく。
そして、ちょうど交差点に差し掛かった時。
「菊井さん。」
その呼びかけに、全ての神経が背中に集中した。