恋 文 日 和



昨日早退したあたしに
心配してくれた神楽くん。


『具合、悪いんだって?大丈夫?』

携帯越しに聞こえる神楽くんの声に
零れそうになる涙を堪えるのに必死だった。



本当は、紹介してくれた神楽くんに最初に言わなきゃいけない。

わかっていても
どうしても言えなかった。


『辞める』という答えを出したあたしに
神楽くんが何て言うのか、ずっと彼を見てきたあたしには

それが、手に取るように想像出来てしまうから。



いずれ彼の耳にも入るのに
それでも、自分の口から言う勇気が出なかったんだ。



『大丈夫だよ。ごめんね、心配かけて…。』

本当は大丈夫なんかじゃない。


“大丈夫”って言葉は便利なモノで。

悪く言えば不安定な人程、よく使う言葉だと思う。



大丈夫、そう言う度に
心の傷が開いていくだけなのに。



『そっか。よかった。』

…神楽くん。


自分勝手で、ごめんね。
こんなあたしを、どうか許して下さい。