全ての用意を済ませ、ロッカールームを出たあたしは
一度洗面所に行こうと方向転換した。
従業員専用の洗面所は、社員の休憩所の隣、一番奥にある。
腕時計を気にしながら
その休憩所を通り過ぎようとした、その時だった。
「…もう少し、大目に見てやってもらえませんか?」
その声に、ピタリと足が止まる。
「これでも結構大目に見てるわよ。でも、」
「あいつはあいつなりに頑張ってるんです!」
…神楽くん、とチーフ?
何?
何の話…?
まるで貼り付けられたように動かなくなった足もとに
グラリと視界が歪んでゆく。
「これ以上、うちも面倒見切れないのよ。」
「けど、菊井は!」
「いい?神楽くん。一応、あなたの紹介って事もあって長い目で見ようと思ってたけど、これだけミスされるとあたしももう庇いようがないの。」
瞬間、ぱっと開けた視界に
映るもう一つの足元。
「…リサさん、」
そこには、腕を組みあたしを見下ろすリサさんが居た。

