「分かった。黙ってる」
「ありがと。その代わりアンタがブランコ漕ぎながらなんか呟いてたのも内緒にしてあげる」
顔をあげてニッと笑った朝川はいつもの朝川で。
もう、涙の影なんてどこにもなくて。
けどやっぱ……。
「もうこんな時間だ。あたし、帰るね~」
そう言って朝川は立ち上がった。スクバを肩にかけ直して軽く俺に手をふると、朝川は一度も振り返ることなく、闇に溶けていった。
この時の俺は、なんで朝川が家とは逆方向のこんなへんぴな公園で涙を流していたのか、とか、なんでそれを黙っててほしい、なんて言ってたのかなんてまだ知るよしもなかったんだ。
