「待って、カイン!」
食事を終え、出て行くカインを追いかけた。
廊下で立ち止まったカインは、怪訝な顔で振り向いた。
「なんだ。俺は、忙しいんだ」
「ごめん。でも、さっきはありがとう」
「なにがだ」
「箸の事・・・。すごく、嬉しかった」
悔しいけど、助かったのは事実。
私の事見てくれて気づいてくれた。
そのことが、すごく嬉しかったのは事実だから。
「いずれ、マナーは必要になる。だから、勉強はしておけ」
「ちょ、ちょっと待って」
「まだなんかあるのか」
助かったのは事実だけど。
こういう状況にしたのはこの人。
「あの、私元の世界に戻りたいの。結婚とか、やっぱり考えられない。だから・・・」
「その話は聞かん。言っただろう。変更はなしだ。これは決めたこと」
「でも・・・」
私はそれ以上なにも言えず、去っていく背中も見ることができなかった。


