「方や、誰しもに歓迎された一方の者はそれはそれは大切に育てられ。すべてのモノを手にした。地位も名誉も、欲しいものすべてを」
「・・・」
「方や隠されたその者には、なにもない。悪しき者とされ。忌わしき者とされ。なきものとされた。同じ日に生まれ、同じほどの力を持っているはずなのに。ただ、羽が黒いと言うだけでこうも運命は違うのか」
「それ・・・」
「真っ暗な暗闇の中、明るいせかいを夢見たそのものは、日に日に募らせていくんだ。憎しみを、絶望を。そして決意する。すべて奪ってやろう。ただ奪うのではなく、大切なものを踏みにじり、無様な姿をさらし、絶望に打ちひしがれながら。そして最後には、その命も奪ってやろうと」
冷たい汗が流れる。
物語、なんかじゃない。
これはきっと、現実だ。
「あなたと・・・カインの事・・・?」
「これを知ったところで、お前に何ができる」
悲しみが。
苦しみが。
きっと、そんな言葉じゃ言い表せられないほどの苦痛が伝わってくる。
でも・・・。


