「どうして・・・、っんで・・・カインのこと」
「昔話を、してあげようか」
冷たい声が響く。
昔話・・・。
コクリと息をのむ。
「昔々あるところに、ひとりの神が誕生しました。これでこの世も安泰と、誰しもが喜びその誕生を歓迎しました」
「え・・・」
「しかし、誕生したのはひとりではなかったのです。もうひとり、しかしそれは、真っ黒い羽を持つものでした」
話ながらゆっくりと私の方へと戻ってくる。
話している表情はいつになく冷え冷えとしていて。
単調に、物語を読むようにすすめられていく話。
「黒は、不吉。忌わしきを意味する。在ってはならぬ存在。消さなければ。こんなものが生まれたなど、その事実すら在ってはならぬ」
忌わしき存在。
黒い羽を持つ―――――
「しかし、消したと思っていたその忌わしき者は、とある人物の手により隠されたのでした。長い年月、それは隠されたままその者により育っていったのです」


