「あなた・・・」
「図太く生きててよかったね」
まったく感情のない声でそう言われた。
ゾクリと背筋が凍る。
この人は、怖い。
「君のおかげで、いいものが見られた」
「え・・・」
「あいつの、この世の終わりのような絶望の顔」
デモンの爪先が私のお腹あたりを指す。
ツーと辿るように上に上にと上がってくる。
「っ」
「裏切り者だと決めつけてた君に助けられ、真実を知って。くく、傑作だったよ。ああ、写真にでもおさめておけばよかった」
「ど・・・して・・・」
「どうして?嫌いだからさ。存在自体が許せないほど憎い。ただ殺すだけじゃ足りない。すべて奪い去ってやりたいほど憎い」
ぐ、とのど元まで来た爪に力が籠められる。
くっと息がつまり息苦しくなる。
手加減なんてしない。
空気を求めようと口を開く。
それでも、空気は入ることはなく意識がもうろうとしてきた。


