だめだ。 あいつと戦っては。 あいつ、なにも感じない。 痛みも、苦しみも、なにもない。 人を傷付けることをなんとも思っていない。 「お前の持ってるもの、全部」 「貴様にくれてやるものなど、なにもない!」 「だったら、奪うまで」 抑揚のない声。 誰か、そう思うのに恐怖に震えて助けを呼びに行くことすらできない。 カインの背中を見つめる事しか、できないの? こんな事、望んでたわけじゃない。 こんな風に、護られたいわけじゃない。 逃げた私をどうして守ろうとしてくれるの。