「下衆野郎が」
聞こえてきたもう一つの声。
その声に、私の心臓は音を立てた。
どうして――――――。
「ようやく姿を現したと思ったら、こんなところでなにをしている!」
「・・・お前のもの、すべて奪いに来たんだよ」
男はそう言って右手に向けていた視線をあげた。
男と私の間に剣を構えて立つ姿。
その背中に、私は息が詰まった。
カインだ。
どうして、カインがここに。
こんなところで、なにをしているの。
カインが、ここにいていいはずがない。
カインは、誰よりも安全な場所にいないと。
それなのに。
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