「そこまで警戒しなくても」

「・・・っ」

「一つだけ、警告しておいてあげる」




やれやれと肩を竦めたイセさんが、窓に向かいながらそう言う。
私は、警戒心を解かないようにイセさんを睨みつけながらその言葉の先を待った。

窓から入る風がカーテンを揺らす。
一層強く吹いた風がカーテンを大きくはためかせた。





「カインの気持ちを受け入れる気がないのなら、早いうちここから出て行け」

「え――――――」

「出て行く手筈なら、いくらでも整えてやるから」






イセさんはそう言うと私の言葉も待たず颯爽と外へと飛び出して行った。
慌ててテラスに出たけど、イセさんの姿はもうそこにはなかった。




不思議な人。




そして、ライと同じようにきっと私を快く思っていない人。
ライのカインへの想いとはまた別物のような気持ちで。