近づいた距離。
間近に迫ったカインの瞳。
カインの長い髪が手の甲を霞める。
冷静になると、ものすごく恥ずかしくなって手を放した。
「・・・ごめん」
煩い心臓の音が、カインにまで聞こえてしまうんじゃないかと思う位。
なんだか落ち着かなくて、逃げるように自分の部屋に入った。
なに、カインにドキドキしてるのよ私ったら。
違う。
これは、違うんだから。
トントン
静まり返った部屋の中で、小さく叩く音が聞こえる。
それは、少し時間を置きながら何度も聞こえてきた。
まるで、ガラスを叩くような少し高い音。
窓?
私は首をかしげながら部屋の奥へと進んだ。
寝室になっている部屋の奥にはいると、その音はすぐそこで聞こえてくる。
テラスに誰かいるのだろうか。


