「お前、なにして・・・」
「なにって・・・、自分の部屋に戻るところで」
「タイミングの悪い奴だな」
「なによ」
私の姿を見つけたカインが、ずけずけとそんなことを言う。
「もしかして君が噂の、ももこちゃん?」
「え?噂って・・・」
「イセ。黙って帰れ。見つかったらまずいだろう」
カインはその男の人をイセと呼び、追い出すようにしっしと手を払った。
「ちぇ。じゃあね、ももこちゃん。今度ゆっくりお話しようね」
「え、あ、はぁ・・・」
イセさんはそう言うとひらひらと手を振って颯爽と走って行ってしまった。
いったい、なんだったんだろう。
カインとは全くタイプの違う明るくて人懐っこそうな人だったけど。


