震えるその声は追い詰められたウサギのようだった。
辛そうに、今にも壊れそうだった。

「俺は不器用だから、それを克服したくて頑張ってきた…なのにッ…」

ギュッ

私の手を握る力が強くなっていく。

「俺なら出来て当然だとか、空っぽだって、何もないって…今までのこと、何も知らないくせに…!!!」

溜め込んでいた言葉を吐き出し、また大粒の涙が零れおちる。

この人は自分の頑張りを認めて欲しかっただけなのかもしれない。

「…ッ!?」

私は無意識のうちに男の子を撫でていた。柔らかい茶髪を解かすようにそっと。

「えらいえらい、よく頑張ったね」

男の子は唖然とし、私をじっと見ている。
さっきまで泣いていたのに今じゃ目を見開いてる。

「ただ、認めて欲しかったんだよね、自分のこと」

それでも気にせず私は撫でた。
誰だって頑張ったことは認めて欲しいし、褒めてほしいもの。

「空っぽなんかじゃない、ちゃんとあるよ。初対面の私でもよくわかる」

表情がないから、嘘だなんて思われてないよね?
そう思い私はもう一度男の子の顔を見た。


ーギュッ

「…え?」

状況が理解できなかった。何でこの子が私を抱きしめてる状態になっているのか。

ど、どうしてこうなった?

「…ごめん、だけど今は許して…」

抱きしめる力は次第に強くなり、私は完全に未動きがとれなくなった。
そしてまた、男の子は…いや、泣き虫王子は泣き始めた。