「…お前の名は、柴乃(シノ)だ。」
「シノ…?」
「…あぁ。
気に入らないか?」
俺が気まずそうに聞くと、壱号はふわりと笑った。
「…いいえ。
綺麗な名ですね。」
その笑顔が、あまりにも似すぎていて。
本当に、帰ってきたのかと。
実は死んでないんじゃないかと。
そう、思ってしまう。
逃げてしまう。
「…柴乃には家事をやってもらうからな。
まずは風呂掃除からだ。」
「はい。」
料理や掃除、洗濯など、少しずつ教えていこう。
極力外には出さないようにして…
って、なんか俺、監禁魔みたいだ。
「あの…貴方の、お名前は…」
「…ん?
あぁ、俺は零央だ。漣零央。」
「零央、さん…。
その、ありがとうございます。
僕に、色々してくれて…
これから、よろしくおねが「いいよ、別に。」
俺は善人じゃない。
自分の欲望のために、お前をここに留めているんだから。


