…そうか、浴衣のせいで大人っぽく見えるのか。

まだガキじゃないか。

「…君は、お父さんお母さんはいるの?」

「知りません、お父さんお母さんってなんですか?」

は。

さすがにそれはないだろう。


「人間はお母さんから産まれてくんの!」

「僕、人間じゃありません。」

はぁぁああ…?

ダメだ、俺の頭はもう限界だ。

「僕、クローンって言うらしいです。
よく、クローン壱号って呼ばれてました。」

嘘だろ?
いや嘘だよな。

そうだ、これは思春期の少年のイタい妄想だ。


「ずっと、真っ白な部屋の中で生きてきました。

窓とドアが一枚ずつあって、ドアにはいつも鍵がかかっていました。

窓は小さいけど、そこから外が見えるんです。

僕は、ソトに出たくて…」

本当らしい話だぞ。
どうする俺。

「でも、日本にそんな技術…」

「うらせいふって、施設の人が言ってました。

ほかにも、弐号と参号がいて…
置いて来ちゃったけど、でも僕は…!

もう、戻りたくなんかない…」

壱号は、泣き出してしまった。