「生徒は先生の言うことを聞かないといけないんだ。
わかったね?」
「僕のご主人様は零央さんだけです。
哉守さんの言うことを全て聞くことはできません。」
「…ふ、そうか。
なら…」
哉守さんの目が急に妖しく光る。
すると、哉守さんは僕へと手を伸ばし、白い髪をすくった。
そして自分の口元までもっていき、少し噛んで引っ張る。
ツン、とした痛みが、頭皮を駆けた。
「…っ、」
「いいねその顔。
俺の言うことが聞けないなら、しつけが必要だな。」
「な、っ」
「俺をヒロと呼べ。」
「嫌、です。」
「呼ばないとキスするぞ。」
き、す?
「…は、そうか。
キスを知らないんだったな。
だったら俺が教えてやる。」
哉守さんがそう言った瞬間、哉守さんの顔があっという間に近づいてきて、気付いたら僕の唇に何かが触れていた。
これは、哉守さんの口?
ゾワッ
一瞬、僕の全身が震えた。
「…あの、なんなんですか?」
「今の意味が何か分かるか?」
「分かりません。」
「今のがキスだ。
そしてキスは、好きな人とするものだ。
俺とキスをしてなにか感じたか?」
ゾワッとした。
それは確かだ。
「ゾワッとしました。」
「それが悪寒だ。
嫌だという気持ち。
お前は恐怖しか知らないらしいからな。
まぁそのうちいろいろな感情を零央から貰うだろう。
それは、さっきのお前の反応からすると、きっと総て+へと変わる。
しかし総てが+になればバランスは崩れる。
だから俺が、今のうちにマイナスを教えてやるよ。
少しずつ、な。」


