世界の中心でアイを叫んだのに【B L】


「昨日、家の前に…白い浴衣を着た少年が倒れていた。

裾には赤い椿が広がっている浴衣だ。

おそらく17歳、誕生日は不明。」

「家出少年か、なんだ平凡だな、と言うにはまだ早いんだろう?」

「あぁ。本題はここからだ。

その少年は髪が白く、実年齢よりずっと大人びている。

訳を聞くと、施設から逃げ出してきたらしく、17年間白い部屋の中で過ごしたという。」

「それじゃあ監禁じゃないか…!」

「驚くのはまだ早い。
彼がその施設で聞いた単語は、『裏政府』『クローン』この二つだ。」

「まさか…!

…いや、あり得ない話ではない…。」

「つまり、日本の裏政府は十数年前クローン技術の完成に成功し壱号を生み出した。

しかし、壱号は外の世界にあこがれ、施設を飛び出した。

…とまぁ、これが彼の話す経緯だ。」

「なるほど…つまり、零央はクローンを拾ったと?」

「ああ、本人も自分が壱号だと認識していた。

さすがに壱号とは呼べないから、俺が柴乃と名付けたが…」

「柴乃?
女の名前じゃないか。

…ふふん、なるほどなぁ。
運良く拾ったクローンに、忘れられない女の名前でも付けてどうしようって言うんだ?」