「俺たちは命を食べてるんだ。
この魚だって、この豆腐だって、もともとは生きてたんだから。」
「じゃあ、料理するって殺すことなんですか?」
「そう。
だから、ちゃんと殺した生き物に対してありがとうって意味でいただきますって言うんだ。
自分の命を俺たちに捧げてくれてありがとうってな。」
生き物に、ありがとう、か…
「いただきます!」
ありがとう。
僕なんかのために殺してしまって、ごめんなさい。
零央さんが作ったものはどれもおいしくて、すぐに食べてしまった。
「最後は、御馳走様でしたって言うんだ。」
「御馳走様でした!」
「よくできました。
…俺も、御馳走様。」
なんだか、心がほかほかするなぁ。
「…やべ、洗い物は昨日教えたとおりな。
それじゃあ、行ってきます。」
「あの、はい!」
「行ってきますって言われたら、行ってらっしゃいって言うこと。」
「あっ…わかりました、行ってらっしゃい!」
「合格。」
零央さんはフッと笑って、走って行ってしまった。
静まり返った部屋。
…洗い物、しなきゃ。
それに、掃除、洗濯…
「…よーし、やるぞ。」
僕は少し寂しい気持ちを抑え、台所へと向かった。


