私があいつと出会ったのは高校1年の秋休み。
友達の大塩にバーベキューに誘われて大塩家に行ったとき、あいつと出会ってしまった。

「なっちゅん!紹介するね!従兄弟のぶーやん独身25歳!仲良くしてあげて!」

「あ、なつきっていいます。よろしく…」

「独身ってゆーな!まだ25歳なんじゃけぇ!学(まなぶ)っていいます。よろしくな!」

第一印象は、まぁ普通の人。
ただ広島弁がすごく気になった。
顔はどっちかというと私の好きな感じだけど…


「学さんって広島の人なんですか?」

「そうじゃよー。学さんってやめてやwそんな感じじゃないじゃろ俺」

「じゃあ何て呼べば…?」

「なんでもええよー!みんなはね、ぶーやんとか、いけぴーとかって呼んどる!」

「えーと…じゃあ…まな…ぶー…」

「え?なんて?」

「まなぶー!!」

なんだかすごく恥ずかしかった。そしてあの笑い声、笑顔。未だにはっきり頭の中に。

「まなぶーか…呼ばれたことないかもwなんか面白いなお前!」

少しキュンってした。別に好きになったわけじゃない。私にはそのとき付き合ってた彼氏がいたし。

「別に面白くないし!なんなん!いじわるまなぶー!好かん!」

「あー!出た!好かん!ほんまに好かんの?」

「好かん。好かん。たぶん好かん。」

完全にあいつのペースにもっていかれてる。

「たぶんてw彼氏おるの?」

「おるよ!ラブラブやけん!いいやろ?」

「最近のガキは、ませとるのぉ」

「なっちゅん!ぶーやん!花火しよ!」

「「はーい!」」

花火をしたり、大塩とまなぶーとその他もろもろと話して写真撮って…

自分に言い聞かせる。

好きになんかなってない。
どーせまなぶーは広島。私は福岡。
きっともう会うことはないんだ。


家に帰って、そのとき付き合ってた『こうちゃん』に電話をかけた。こうちゃんは優しくて私のことを大切に思ってくれる大事な彼氏。

「こうちゃんこうちゃん」

「ん?どーした?」

「もし夏きに好きな人できたらどーする?」

「何言ってんの?夏きが好きなのは俺やろ?」

「まぁそうだけど…」

「いきなりどーしたん?なんかあった?」

「ううん!なんでもない!」

「そっか!なんかあったら言えよ!」

「ありがとう!明日こうちゃん学校でしょ?おやすみなさい!」

「おやすみ!」


こうちゃんは共学、私は女子校に通っていた。
なかなか会えないけど、電話したりLINEしたりいろいろ充実してたし、仲良しだった。こうちゃんが大好きで大好きでしかたなかった。

そろそろ寝ようかなとしたとき、LINEのグループ招待がきた。

『大塩家BBQ2012秋』

なんやこれと思ったけどとりあえず参加…
メンバーは大塩母、大塩父、大塩、まなぶー、大塩弟、私。
なんで私入れてみたん……

その日撮った写真がたくさん送られてくる。

池田 学…
まなぶーだ。

友達追加しようかな…いや、関係ないし…


そのときLINEがきた…


【おつかれ!今日楽しかったな!あんまり話せんかったけど!よかったら俺の番号登録しとって!】

携帯番号とメールアドレス…
これは登録しててもいいのだろうか……
とりあえずしておこう……

登録してとりあえず1度かけてみた。

「もしもし、池田です」

「あ、あの、夏きですけど…」

「なっちゃん!おつかれ!登録してくれたん?ありがとー!」


ほんの2時間くらい前に聞いた声なのに、すごく久しぶりに感じた。電話ごしのあいつの声。

さっきより優しく聞こえる。

「一応登録しておこうかなって……」

「ありがと!まぁ連絡することないと思うけど…いつでも連絡してきて!」

「はい。」

「あやか(大塩)になっちゃんと連絡交換したって言ったら怒られるやろうなーw」

「あいつは面白がるだけですよw」


「ヘラヘラしながらな!w」

こんなたわいもない会話で1時間も話してしまった。
切った後ふと思う。

きっともうこうやって話すことないんだろうな…
会うことなんてもうないんだろうな……

だめだめ。私にはこうちゃんがいる。


でもこれから……わたしは……