「あの雲ハンバーガーみたいじゃね??」

ある日の授業中。拓海くんがいった。


同じ雲を見ていた。


「あたしはどら焼きに見えた..」


「ははは!どっちも食いしん坊かよっ」



拓海くんが無邪気に笑う。



「いつも外見てるよねー森川さんって」


あたしをたまに見てくれてるってこと??
なんてなっ。


「夏になる前の空ってなんかすげーキレイ。」

「あ....。あたしもそう思う..」


ただ呆然と、心の声が声となって漏れた。

だってずっとそう感じながら眺めていた空だったから。


同じ空を、同じ雲を、同じ気持ちで見つめていた...

そんな事がなんだかとてつもなく嬉しくて
胸がぎゅっと締め付けられるような
泣きそうな気持ちになった。

拓海くんと隣の席になってから
自分の中に今までなかった気持ちや感情がたくさん湧いてくる。


ドキドキしたり恥ずかしくて落ち着かないのに
フワフワしてなんだか嬉しいんだ。





なんとなくあたしにもわかった。

これって、恋って気持ちなんだ....



見たことも触れたこともなかったから
’恋’ ってものが本当にあるのか、

あるとしたらどんなものなのか想像もつかなかったけど。


漠然と心の中から勝手に生まれてくるんだ、


拓海くんが、好き、なんだ。